令和8年6月20日 大谷パパの隠密産休と、絶対に雨を降らせたい男たち

 

大谷パパの隠密産休と、絶対に雨を降らせたい男たち(架空で空想のショートストーリー)※画像はすべてAIによるイメージです

第一章:ノイズまみれの朝と、消えた背番号17

2026年(令和8年)6月20日、土曜日の朝。世界はいつも通り、無数の情報とノイズにまみれて目を覚ました。

フリーランスのルポライターであるshimoは、書斎の窓から差し込む初夏の鋭い陽射しを避けるようにブラインドを下ろし、三杯目のブラックコーヒーを喉に流し込んでいた。彼が長年身を置いてきたメディア業界は、ここ数年で劇的な変容を遂げていた。AIが数秒で生成するニュース記事がネット空間を埋め尽くし、事実確認(ファクトチェック)の追いつかない憶測が真実のような顔をして闊歩する時代。だからこそ、shimoは自らの足で歩き、自らの目で見たものだけを、時流に流されない重厚なテキストとして紡ぎ出すことに固執していた。

しかし、この日の朝だけは、彼もまた世界を駆け巡る「情報という名の狂騒」に巻き込まれざるを得なかった。

『速報:ロサンゼルス・ドジャース、大谷翔平が本日のスタメンから急遽外れる。ベンチ入りもなし。球団からの正式発表は未だなし』

午前7時過ぎ、スマートフォンを震わせたその短いテキストは、瞬く間に世界中のソーシャルメディアを大パニックに陥れた。2026年シーズン、前人未到の記録更新へ向けて爆走中だった背番号17の突然の「消失」である。

ネット上の反応は、まるで巨大な蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
「ついに怪我か!? 右肘に違和感が再発したのか?」
「いや、これは電撃トレードの予兆だ。水面下で信じられないメガ・ディールが動いているに違いない」
「AIの予測モデルによれば、宇宙人に誘拐された確率が0.001%あるらしいぞ」

ドジャースタジアムの現地メディア席も混乱の極みにあった。shimoのノートパソコンの画面には、現地の中継映像が映し出されている。普段は冷静沈着なベテランスポーツキャスターたちが、マイクを握りしめたまま言葉に詰まり、右往左往する球団広報の姿がチラチラと見切れていた。大谷翔平という存在は、もはや単なる一人の野球選手ではない。彼の一挙手一投足は、日米の経済効果を左右し、何百万という人々のその日の気分を決定づける、一種の巨大なインフラストラクチャーとなっていた。そのインフラが、何の前触れもなく停止したのだ。

「まったく、現代人は少し落ち着くということを忘れてしまったらしい」

shimoはため息をつきながら、ブラウザのタブを切り替えた。彼には、この騒動の裏に何か別の、もっと人間的で温かい理由があるような気がしてならなかった。彼は長年の勘を信じ、ロサンゼルスを拠点に世界中を飛び回っている気鋭の若手映像ジャーナリスト、SENAに暗号化されたメッセンジャーアプリで連絡を入れた。

『LAは大変なことになっているな。真実の断片は掴めているか?』

数分後、SENAから短い返信があった。

『shimoさん、お疲れ様です。こっちのメディアは完全にパニック映画のワンシーンですよ。でも、僕の独自ルートで最高にハッピーで、最高に人間臭い裏情報が入りました。いま、通話できますか?』

SENAからのビデオ通話の着信音が、静かな書斎に鳴り響いた。画面に映し出されたSENAは、金髪に染め上げた前髪を無造作に掻き上げながら、どこかいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。その後ろには、カリフォルニアの抜けるような青空と、パームツリーが揺れる風景が広がっている。

「単刀直入に言いますよ、shimoさん。大谷選手は怪我でもトレードでもありません。宇宙人にも攫われていません」
「では、何故スタメンから消えたんだ? 球団が沈黙しているのが不自然すぎるだろう」
「沈黙しているんじゃありません。球団側も、発表のタイミングを計っていただけです。実は昨夜遅く……」

SENAは声を潜め、しかし隠しきれない興奮を交えて言った。

「大谷選手に、第二子が誕生したんです。彼はメジャーリーグの労使協定で定められた『パタニティ・リーブ(父親の産休)』を取得しました。今頃彼は、バットの代わりにオムツを握りしめているはずですよ」

shimoは一瞬呆然とし、そして腹の底から湧き上がるような笑い声を上げた。 「パタニティ・リーブか! なんてこった、世界中が悲観的な憶測で暴走している時に、当の本人は新しい命の誕生に立ち会っていたというわけか」

「ええ、最高にクールでしょう?」SENAも笑った。
「アメリカ社会では、どれだけ重要なポストにいる人物でも、いや、トップ・オブ・トップだからこそ、家族のための時間を最優先にすることが社会的なステータスであり、強いメッセージになります。彼が堂々と産休を取ることは、どんなホームランよりも価値のある社会貢献かもしれません。……ただ、現地からの情報だと、別の意味で大苦戦しているみたいですが」

「大苦戦? どういうことだ」

SENAの解説によると、事の顛末はこうだ。 ビバリーヒルズの閑静な住宅街にある大谷邸では現在、かつてない「死闘」が繰り広げられているという。無事に退院してきた妻と、生まれたばかりの赤ん坊を前に、超人的な身体能力を持つアスリートが、たかだか数十グラムの紙オムツに悪戦苦闘しているのだ。

160キロの豪速球を捉える動体視力も、特大のアーチを架ける筋力も、新生児の柔らかすぎる脚をそっと持ち上げ、テープを適切な位置で止めるという繊細なミッションの前では無力に等しかった。さらに悪いことに、愛犬のデコピンが新しい家族の登場に興奮しきっており、大谷が広げた新しいオムツを咥えてはリビングを逃げ回っているらしい。

「想像してみて下さいよ、shimoさん」SENAは腹を抱えて笑った。
「世界最強の野球選手が、『こら、デコ! それは返して!』って犬を追いかけ回しながら、もう片方の手で赤ん坊をあやしている姿を。しかも、その事実を知らないメディアは『巨大な陰謀だ』と騒ぎ立てている。このギャップ、最高のドキュメンタリーになりませんか?」

「確かに、事実は小説よりも奇なり、だな。巨大な社会的影響力を持つヒーローが、一人の不器用な父親として新しい命と向き合っている。誰もがほっこりする、素晴らしいニュースだ」

shimoはノートパソコンのキーボードに手を置いた。この心温まる真実を、パニックに陥っている日本の読者に向けてどうやって伝えようか。そう考え始めた時だった。

彼のもう一つのスマートフォンが、けたたましいアラート音を鳴らした。 画面には、日本の気象庁からの緊急速報が赤い文字で点滅していた。

『東北南部および北陸地方、本日午前11時をもって梅雨入りしたとみられると発表』

shimoは画面を見つめ、ふと窓の外を見た。東京の空はどんよりとした雲に覆われ始めている。 「……梅雨入りか。遅すぎるくらいだったが、ようやく農家の人々も一息つけるな」

しかし、この気象庁の発表が、遠く離れたロサンゼルスの「大谷のパタニティ・リーブ」というニュースと奇妙な化学反応を起こし、日本の地方都市で前代未聞の大騒動を巻き起こすことになるとは、この時のshimoは知る由もなかった。

第二章:ひび割れた大地と、雨乞いの男たち

2026年という年は、日本の農業関係者にとって「呪われた年」として記録される寸前だった。

地球沸騰化という言葉が定着して久しいこの時代、気候変動はもはや遠い未来の警告ではなく、目の前の現実として人々の生活を脅かしていた。春先から異常な少雨が続き、本来ならば恵みの雨に潤うはずの6月中旬になっても、東北南部から北陸にかけての空は皮肉なほどに青く澄み渡っていた。

shimoは先日、取材で山形県にある知人の果樹農家を訪れていた。そこでの光景は、ジャーナリストとしての彼の胸を重く締め付けるものだった。

見渡す限りのサクランボ畑。しかし、葉は生気を失って黄色く縮れ、本来ならば宝石のように赤く輝くはずの果実は、水分を失ってシワシワになりかけていた。土は乾ききってひび割れ、歩くたびにパサパサと乾いた音を立てた。

「もう限界だべ。あと三日、あと三日雨が降らねえと、今年の収穫は全滅だ。それどころか、木そのものが枯れちまう」

顔の皺に土埃を詰まらせた初老の農家、佐藤は、絶望的な声でそう吐き捨てた。地域の用水路は干上がり、地下水を汲み上げるポンプも過負荷で悲鳴を上げている。農業という、自然の摂理に完全に依存した営みの脆さを、これほど痛感する時はなかった。

そして6月19日の夜。 追い詰められた佐藤をはじめとする地域の農家たちは、半ばヤケクソで地元の公民館に集まっていた。現代の科学技術が及ばないのなら、もはや神頼みしかない。彼らは倉庫の奥から埃を被った和太鼓を引っ張り出し、何十年ぶりかに行われる「雨乞いの儀式」という名目の、悲壮な宴会を開いていた。

ブルーシートが敷かれた公民館の畳の上には、安い日本酒の一升瓶と、乾き物のツマミが散乱している。彼らは酔いに任せて太鼓を叩き、奇妙な踊りを踊りながら、天に向かって雨を懇願した。

「降れ! 降ってくれぇ! 龍神様よぉ!」

その光景は、客観的に見れば滑稽かもしれない。しかし、そこには生活を懸けた人間たちの、切実でシリアスな祈りが込められていた。shimoは、彼らから送られてきたその宴会の動画を見て、現代社会における人間の無力さを思い知らされると同時に、彼らの底抜けのバイタリティに奇妙な感動を覚えていた。

そして、運命の6月20日、午前11時。 気象庁からの「梅雨入り発表」の速報が、佐藤たちのスマートフォンに一斉に届いた。

「おおおおっ!! 降るぞ! ついに雨が降るぞ!!」
「気象庁が言ったんだ、間違いない! 空を見ろ、雲が厚くなってきた!」

公民館で雑魚寝していた農家たちは飛び起き、歓喜の雄叫びを上げた。ひび割れた大地を潤す、待望の雨雲が確実に接近していた。彼らにとって、それは単なる気象現象の变化ではなく、命を繋ぐ奇跡そのものだった。

しかし、情報過多の現代社会の罠が、ここで発動した。

梅雨入りの速報から遅れることわずか数分。各メディアのニュースアプリが、一斉にトップニュースを切り替えた。球団からの正式発表を受け、SENAが伝えていた情報が裏付けられたのだ。

『速報:ドジャース大谷翔平、第2子誕生でパタニティ・リーブ取得! スタメン外れの理由は「新たな命の誕生」』

歓喜に沸く公民館のテレビ画面にも、テロップと共にそのニュースが大々的に報じられた。 酒が抜けきっていない佐藤の濁った瞳が、テレビ画面とスマートフォンの画面を交互に見つめた。そして、長年の過酷な農業生活で鍛え上げられた彼の脳内で、二つの全く無関係な情報が、信じられないほどの飛躍をもって結びついてしまった。

「おい……みんな、見ろ! 大谷のところに、赤ん坊が生まれたぞ!」 佐藤が叫ぶと、周りの農家たちも画面に釘付けになった。

「ちょうど今、だ! 今、梅雨入りが発表されて、同時に赤ん坊が生まれたんだ!」 佐藤の声は震えていた。
「これは……偶然じゃねえ。あの凄え大谷の赤ん坊だぞ? きっと、龍神様の生まれ変わりに違いねえ! 大谷の赤ん坊が、俺たちの村に恵みの雨を連れてきてくれたんだ!!」

「なんだって!?」
「いや、あり得るぞ! あの大谷ならやりかねねえ!」
「大谷ベビー、バンザイ! 恵みの雨、バンザイ!!」

論理的な思考回路など、もはや彼らには必要なかった。絶望の淵から救い出された安堵感と、国民的ヒーローの慶事がもたらした高揚感。それらが融合し、彼らは「大谷の第2子が雨乞いの祈りを聞き届け、雲を呼んだ」という、現代の神話を生み出してしまったのだ。

「酒だ! 酒を持ってこい! 祝いの席だ!!」
「雨乞いダンスじゃねえ、これからは大谷ベビーの誕生祝いダンスだ!」

公民館は、前夜の悲壮感から一転し、狂喜乱舞の渦に包まれた。彼らは太鼓の代わりに空き缶を叩き、乾ききった喉に再び酒を流し込んだ。 この滑稽だが圧倒的に幸福な誤解は、SNSを通じて瞬く間に拡散された。

『山形の農家たち、大谷第2子誕生を「雨を呼ぶ神の子」として崇め、どんちゃん騒ぎ中』
『北陸の雨乞い儀式、大谷パパの産休ニュースで謎の感謝祭に発展』

東京の書斎でこの惨状(?)を追っていたshimoは、熱いコーヒーを吹き出しそうになった。
「無茶苦茶だな……。だが、これもまた人間の強さか」

ロサンゼルスのビバリーヒルズでオムツと格闘している大谷本人は、まさか自分の赤ん坊が、遠く離れた日本の東北地方で「天候を操る神の子」として崇められ、農家たちを狂喜させているとは夢にも思っていないだろう。

しかし、世界のどこかで起きた一つの幸せな出来事が、遠く離れた誰かの心を(勘違いであれ)救うことがある。情報化社会のバグが生み出したこの温かい連鎖に、shimoはジャーナリストとしての鋭い視点を一時忘れ、ただ一人の人間として深く、温かい笑いを漏らした。

だが、この「幸福な誤解の連鎖」は、日本国内にとどまらなかった。 世界は繋がっている。舞台は海を越え、歴史と伝統が息づくヨーロッパ、ベルギー王国へと移ろうとしていた。

第三章:ラーケン宮殿の静かなる危機と、若き王女の微笑み

時差により、日本が狂騒の渦に包まれていた頃、ヨーロッパの中心部、ベルギーの首都ブリュッセルは穏やかな午前を迎えていた。

この日、ブリュッセル郊外の美しい森に囲まれたラーケン宮殿では、歴史的な外交行事の準備が進められていた。日本国の天皇・皇后両陛下が、国際親善のための公式訪問としてベルギーに到着されたのだ。

2026年現在の国際情勢は、決して平穏とは言えなかった。大国間の覇権争い、地域紛争の火種、そして国境を越えるサイバーテロ。分断と緊張が世界を覆う中、武力も経済的制裁力も持たない「象徴」である皇室・王室の外交は、文化と相互理解というソフトパワーを通じて、国家間に目に見えない強靭な絆を結ぶ極めて重要な役割を担っていた。

特に日本とベルギーの皇室・王室の親交は古く、幾世代にもわたって温かい関係が築かれてきた。この日も、両陛下を歓迎する壮麗なセレモニーが企画されており、ベルギー王室側の主賓として、次期王位継承者である24歳のエリザベート王女がその準備の陣頭指揮を執っていた。

知的で語学堪能、そして現代的な感覚を持つエリザベート王女は、国民から絶大な人気を集める次世代のリーダーであった。彼女は両陛下に最高の敬意と「おもてなし」を示すため、式典の細部にまで自ら目を通していた。

しかし、どんなに完璧な準備をしていても、魔物は細部に宿るものである。

式典開始まであと30分と迫った頃。宮殿の壮麗なホールの一角に設けられた音響ブースで、若きベルギー人の音響スタッフ、ジャンは青ざめていた。

彼は、両陛下が入場される際に演奏されるオーケストラまでの「つなぎ」のBGMとして、日本の伝統的で祝祭感のある楽曲を流すよう指示されていた。しかし、極度の緊張と不慣れな日本文化への知識不足から、彼は用意されていた公式のプレイリストではなく、手元の端末で「Japan, Most famous, Celebration song(日本、最も有名、お祝いの曲)」と慌てて検索してしまったのだ。

AIが弾き出した検索結果のトップには、現在世界中のネットを席巻している「ある楽曲」が表示されていた。 それは、大谷翔平の第2子誕生に沸き立つファンたちが、SNS上で狂ったようにリピート再生している「背番号17の軽快な応援歌(あるいはスタジアムでの登場曲)」であった。

「よし、これだ。再生回数も桁違いだ。日本の国を挙げてのお祝いの曲に違いない」

ジャンは安堵の息をつき、そのポップでアップテンポなデジタルサウンドを、厳かな宮殿の音響システムにセットした。もしこのまま両陛下が入場された瞬間に、スタジアムを揺るがすようなベース音と共に「オオタニ!」と叫ぶ合いの手が入った曲が流れてしまえば、国際的な外交儀礼上の大事故(プロトコル違反)となることは火を見るより明らかだった。

その絶体絶命の危機に気づいたのは、最終確認のためにホールを足早に歩いていたエリザベート王女だった。

彼女は音響ブースのモニターに映し出された、奇妙な日本語のタイトルと、それに不釣り合いなポップなアートワークを見逃さなかった。彼女はオックスフォード大学留学時代から日本の現代文化にも深い興味を持っており、当然、現在進行形で世界を熱狂させている「Shohei Ohtani」の存在とその熱狂ぶりを知っていた。

「待って、ジャン」 王女は静かに、しかし威厳のある声で音響ブースに足を踏み入れた。

「ひぃっ! は、はい、殿下!」
「あなたがセットしているその曲は、日本の素晴らしい楽曲には違いないけれど、今日の公式な歓迎式典には少し……エネルギーに満ち溢れすぎているかもしれないわ」

王女はモニターを指差した。 「これは、世界で最も偉大なベースボールプレイヤーの一人、ミスター・オオタニのテーマソングよ。しかも私のスマートフォンに入ったニュースによれば、彼は数時間前に第2子を授かったばかり。日本の人々は今、この曲を彼への祝福のために歌っているの」

ジャンは血の気を失い、震える手で即座に設定をキャンセルした。 「も、申し訳ございません! 私はてっきり、これが日本の伝統的な祝歌だと……!」

「構わないわ。AIの検索アルゴリズムは、時として文脈を理解しないから」 エリザベート王女は優しく微笑み、あらかじめ用意されていた正統なクラシックのプレイリストを指示した。

「でも、ジャン。あなたの選曲は完全に間違っていたわけではないわ。今日という日は、日本の両陛下をお迎えする素晴らしい日であると同時に、世界中に喜びをもたらす新しい命が生まれた日でもあるのだから」

王女はいたずらっぽくウインクをした。
「この曲は、式典が終わった後のプライベートな晩餐会の時に、こっそり流すことにしましょう。両陛下も、自国の英雄の慶事を、遠く離れたベルギーの地で知れば、きっとお喜びになるはずよ」

「……はい、殿下。ありがとうございます!」 ジャンは深く一礼し、冷や汗を拭った。

こうして、ベルギーの王宮を舞台にした前代未聞のBGM誤爆事件は、若き王女の深い教養と機転、そして粋な計らいによって未然に防がれた。

この一連の出来事は、現場の片隅にいた公式記録係を通じて、極秘裏に一部のメディア関係者にリークされた。そして、SENAが持つ独自のヨーロッパ・ネットワークを通じて、東京のshimoの元へと届けられたのである。

第四章:バタフライ・エフェクトは希望の歌を歌う

東京の書斎。 時刻は午後を回り、窓の外では、農家たちが待ち望んだ「恵みの雨」が、アスファルトを静かに濡らし始めていた。

shimoは、パソコンのモニターに三つのテキストファイルを並べていた。

一つは、ロサンゼルスのビバリーヒルズで、巨大な手で小さな紙オムツと格闘し、愛犬に振り回されている世界最強のアスリートの姿。 一つは、日本の東北地方で、ひび割れた大地を潤す雨を「大谷ベビーの奇跡」と信じて疑わず、狂喜乱舞している農家たちの姿。 そしてもう一つは、ベルギーの厳かな宮殿で、現代のアルゴリズムが生み出した危機を、スマートな知性とユーモアで乗り越えた若き王女の姿。

地理的にも、社会的立場も、全く接点のない三つの出来事。 しかし、2026年6月20日というこの一日において、それらは「大谷翔平の第2子誕生」という一つのニュースをハブ(結節点)として、見事に繋がり合っていた。

「まるで、幸福なバタフライ・エフェクトだな」 shimoは独り言を呟き、キーボードを叩き始めた。

蝶の羽ばたきが遠く離れた場所で竜巻を起こすというカオス理論。現代のSNS社会では、悪意あるフェイクニュースや誹謗中傷がバタフライ・エフェクトを引き起こし、誰かの人生を破壊してしまうことがあまりにも多い。

しかし、今日起きたことは違った。 ロサンゼルスでの一つの生命の誕生が、情報として世界中を駆け巡り、日本の農家に希望を与え、ベルギーの宮殿に小さな笑いと機転をもたらした。情報の誤配や勘違いが含まれていたとしても、そこにあるのは「誰かを祝福したい」「安堵したい」「敬意を払いたい」という、人間の根源的な、そして善意に満ちた感情だけだった。

「AIには、このおかしみは理解できないだろう」

shimoは記事の筆を進めた。 アルゴリズムは、大谷のニュースを「エンゲージメント(反応)が高いデータ」として処理するだけだ。農家の雨乞いを「非科学的な行動」と分類し、ベルギーでのBGM選曲ミスを「エラー」として処理するだろう。

しかし人間は違う。 人間は、全く関係のない事象の間に物語を見出し、勘違いを笑い飛ばし、ピンチをユーモアで切り抜ける力を持っている。どんなに社会が分断され、気候変動が生活を脅かそうとも、この「人間臭さ」がある限り、世界はまだ捨てたものではない。

ピコン、とSENAから再びメッセージが入った。 今度は動画ファイルが添付されている。

『shimoさん、LAの現地カメラマンからの隠し撮り……じゃなくて、奇跡の一枚です。確認して下さい』

動画を開くと、ビバリーヒルズの豪邸の裏庭らしき場所が映っていた。 そこには、大谷翔平が立っていた。彼は左腕に小さな赤ん坊を抱き、右手で器用に哺乳瓶を持たせている。その足元では、遊び疲れたデコピンが丸くなって眠っていた。

彼らを取り囲むカリフォルニアの夕暮れは、まるで世界中の祝福を集めたかのように黄金色に輝いていた。大谷の表情は、グラウンドで見せる鬼神のようなそれとは全く違う、ただの優しく、少し疲れた父親の顔だった。

『完璧なオムツ替えはまだマスターしていないようですが、ミルクをあげる才能はメジャー級みたいですね』 SENAからのメッセージには、笑っている絵文字が添えられていた。

shimoは静かに微笑み、記事の最後の段落を打ち込んだ。

彼がグラウンドに戻ってくる時、世界は再び背番号17に熱狂するだろう。しかし私たちは忘れない。彼がスタメンから消えたあの一日、世界中でどれほど奇妙で、滑稽で、そして愛すべき大騒動が起きていたかを。雨を降らせた男たちと、機転を利かせた王女、そしてオムツと格闘した父親。彼らが織りなしたこの隠密産休の物語は、どんな記録よりも長く、私たちの記憶の中で温かく輝き続けるはずだ。

書き上げた原稿を送信ボタンで編集部に送ると、shimoは深く背伸びをした。

エピローグ:雨上がりの空へ

翌朝のニュースは、世界が少しだけ優しい場所になったことを伝えていた。

日本の東北・北陸地方では、一晩降り続いた恵みの雨が大地を深く潤した。ニュースのインタビューに答える農家の佐藤は、泥だらけの顔をほころばせながら「大谷さんの赤ん坊に感謝だべ。秋には最高のサクランボを送らねえとな!」と、カメラに向かって豪快に笑っていた。科学的根拠は皆無だが、彼の笑顔には確かな希望が満ちていた。

ベルギーでは、天皇皇后両陛下の歓迎式典が厳粛かつ和やかに終了したことが報じられた。公式な報道には一切出なかったが、晩餐会の最中、オーケストラが突如としてアップテンポな曲をジャズ風にアレンジして演奏し、両陛下とエリザベート王女が楽しそうに言葉を交わしたという噂が、まことしやかに囁かれていた。

そして、ロサンゼルス。 球団の公式SNSは、大谷翔平が明日の試合からチームに合流することを正式に発表した。短い声明の最後には、こう付け加えられていた。

『彼は、新しいチームメイト(ベビー)との契約交渉(オムツ替え)に少々手こずったようですが、グラウンドでの準備は万端です』

shimoはコーヒーカップを手に、窓を開けた。 東京の空は、昨日の雨が嘘のように晴れ上がり、雨上がりの澄んだ空気が街を包み込んでいた。遠くの空に、うっすらと虹が架かっているのが見える。

世界はノイズに満ち、問題は山積みだ。気候危機も、国際的な緊張も、簡単には解決しない。しかし、人間社会は時折、こういう奇跡のような一日を挟み込みながら、少しずつ、不器用に前へ進んでいくのだ。

「さて、今日も一日が始まるか」

shimoは新しく立ち上げたテキストエディタに向かい、キーボードに指を置いた。 世界はまだ、語るべき物語に溢れている。そしてその物語は、今日よりも少しだけ良い明日へと続いていると、彼は確信していた。

令和8年6月12日 地球が狭くなった日:2026年6月12日の記録

 

地球が狭くなった日:2026年6月12日の記録(架空で空想のショートストーリー)※画像はすべてAIによるイメージです

序章:臨界点に向かう世界

2026年。世界は、かつてないほどの分断と、それと矛盾するような強烈な統合のうねりの中にあった。数年前に人類全体を覆ったパンデミックの記憶は、都市の景観や人々の衛生観念に微かな痕跡を残すのみとなり、経済は再び過熱し始めていた。いや、単なる過熱ではない。それは物理的な限界を突破しようとする、人類という種の壮大な「足掻き」でもあった。

人工知能が言語や芸術の領域すら浸食し、労働の定義そのものが根底から覆されつつある社会。気候変動による異常気象がニューノーマルとなり、各国のエネルギー政策が右往左往する中、それでも人々は熱狂を求めていた。地球という限られたリソースの中で、私たちはどう生きるべきか。その問いに対する明確な答えが出ないまま、テクノロジーだけが指数関数的な進化を遂げている。

2026年6月12日。後世の歴史家が「地球が最も狭く、同時に最も広くなった日」と呼ぶことになるこの日、二つの巨大な出来事が重なった。

一つは、北中米大陸を舞台にした「2026 FIFA ワールドカップ」の開幕である。アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国共同開催という史上初の試みであり、出場枠も従来の32カ国から48カ国へと大幅に拡大された。世界中のありとあらゆる文化と熱狂が、物理的な国境を越えて一つの巨大な渦を巻く日。

そしてもう一つは、イーロン・マスク率いる宇宙開発企業「SpaceX」の、NASDAQへの歴史的な新規株式公開(IPO)である。長らく非上場を貫いてきた同社が、ついに一般の資本市場に組み込まれる。それは「宇宙」というフロンティアが、国家の威信をかけた浪漫から、ウォール街のマネーゲームを巻き込んだ巨大な「経済圏」へと変貌する決定的な瞬間だった。

この日、地球上のあらゆる場所で、何十億もの人間が同じ時間を共有していた。

午前:それぞれの朝、それぞれの重圧

ケープカナベラル、午前6時00分(EDT)――shimoの視点

フロリダ州、ケープカナベラル宇宙軍施設。海風が運んでくる特有の湿気を肌に感じながら、shimoは紙コップのコーヒーを啜った。まずい。自動販売機のコーヒーは、2026年になってもちっとも進化しない。

「おいshimo、顔色が悪いぞ。昨夜は眠れなかったのか?」

同僚のエンジニアであるマイクが、分厚いファイルの束を抱えながら声をかけてきた。shimoは苦笑して首を振る。 「いや、いつも通りさ。ただ、今日という日の重さを胃袋で消化しきれていないだけだ」

shimoは、次世代型再使用ロケットの推進系データ解析を担当するシニア・エンジニアだ。かつて彼は、別の国で国家的プロジェクトに関わっていた。しかし、彼が設計の一部を担当したロケットは、打ち上げからわずか数分後に指令破壊という最悪の結末を迎えた。空に散る火花と、管制室を包んだあの重い沈黙。何百億という資金と、何百人という技術者の数年間の人生が、一瞬にして海の藻屑となった。

あの時の絶望は、今でもshimoの胸の奥に黒い染みとなって残っている。失敗は成功の母だと人は安易に言うが、現実はもっと残酷だ。失敗の重みに耐えきれず、業界を去っていった仲間を彼は何人も知っている。失敗して這い上がる者もいれば、一度の失敗で全てを失う者もいる。そして、運よく失敗を経験せずに上り詰める者もいる。人生は不平等で、途方もなく難しい。

それでもshimoは、空を見上げることをやめられなかった。アメリカに渡り、幾つかの民間宇宙企業を経て、今のポジションに就いた。 今日、彼が所属するチームは、SpaceXのIPOという歴史的なニュースの裏で、新たな深宇宙探査機の軌道投入に向けた最終サポートミッションを控えている。彼らのシステムが正常に稼働しなければ、ロケットは予定の軌道に乗らない。

「まあ、今日は俺たちのお祭りでもあるしな」とマイクが笑う。「SpaceXの上場だ。これで宇宙産業全体に莫大な資金が流れ込んでくる。俺たちの給料も上がるかもしれないぜ」 「それより先に、目の前の液体酸素のバルブ圧力をチェックしてくれ。夢を見るのは軌道に乗ってからだ」 shimoはそう言って、再びモニターの羅列された数値の海へと視線を戻した。過去の失敗が教えてくれた唯一の確実な真理は、「魔物は細部に宿る」ということだけだった。

ウォール街、午前8時00分(EDT)――SENAの視点

同じ頃、ニューヨーク・マンハッタン。ウォール街の巨大ヘッジファンドのオフィスは、開場前特有のピリピリとした、そしてどこか浮かれた空気に包まれていた。

「なあSENA、今日の気配値、見たか? イカれてるぜ」 隣のデスクの巨漢、ブラッドがドーナツの粉をキーボードにこぼしながら興奮気味に言った。

SENAは28歳の若きプロップ・トレーダーだ。彼らの相手は人間ではない。100万分の一秒のスピードで注文を繰り返す高頻度取引(HFT)のAIアルゴリズムたちだ。AIが市場を支配する2026年において、人間のトレーダーに求められるのは、AIには予測不可能な「群衆の熱狂とパニック」という感情の揺らぎを読み取ることである。

SENAのモニターには、本日の主役、SpaceXのティッカーシンボルが点滅している。公募価格から計算された初値予想は、既にウォール街の常識をはるかに超えていた。

「ああ、見ているよ。でもブラッド、気をつけろ。買い一色に見える時ほど、アルゴは容赦なく刈り取りに来る」 SENAは冷静に答えながらも、マウスを握る手には微かに汗が滲んでいた。

彼にも苦い経験がある。数年前、新興のEVメーカーの株で、彼は「絶対の自信」を持って莫大な資金を突っ込んだ。しかし、SNSでのCEOの不用意な発言一つで株価は暴落。彼は一瞬にして数千万ドルの損失を出し、ファンドをクビになりかけた。 どん底から這い上がる日々は地獄だった。睡眠時間を削り、アルゴリズムの癖を徹底的に解析し、自分の直感という不確かなものを、確率という冷徹な数字に落とし込む作業を続けた。失敗だけで終わる人間にはなりたくなかった。市場は何も教えてくれない。ただ結果だけを突きつけてくる。

「今日は宇宙へのチケットが売られる日だ」SENAは独り言のようにつぶやいた。「誰もが歴史の一部になりたがっている。その『欲』の形を、俺は見極める」 午前9時30分のオープニングベルまで、あと1時間半。SENAはカフェインの錠剤を水で流し込み、深呼吸をした。

メキシコシティ、午前7時00分(CST)――HIROMの視点

ニューヨークから南西へ約3300キロメートル。メキシコシティにある標高2200メートルの聖地、エスタディオ・アステカ(アステカ・スタジアム)。 巨大なコンクリートのすり鉢の中を、HIROMはインカムから飛び交う怒号をBGMに走り回っていた。

「おい、VIP席のCブロック、まだ配線が終わってないってどういうことだ!? スポンサーが来るまであと3時間だぞ!」 「芝生の状態はどうなってる!? 昨日の雨で南側が緩いって聞いたぞ!」

HIROMは、このモンスター級のイベントを裏から支える設営会社のスタッフだ。日本人でありながら、南米のインフラ構築の現場で長年揉まれてきた彼は、特有の図太さと語学力を買われ、このスタジアムの現場監督補佐に抜擢されていた。

今大会は「アメリカ・カナダ・メキシコ共催」で「48カ国出場」。言葉の響きは美しいが、現場はカオスそのものだった。3カ国の異なる税関システム、ビザのトラブル、言葉の壁、そして何より「やり方の違い」による文化摩擦。アメリカの効率主義と、メキシコのおおらかさ(悪く言えばルーズさ)が毎日衝突していた。

「セニョール・HIROM! ゲート4のデジタルサイネージが映らないんだ! AI翻訳機を通しても、アメリカの業者が何を言ってるのかさっぱり分からない!」 メキシコ人の若手スタッフ、カルロスが泣きそうな顔で走ってきた。 「わかった、俺が行く。カルロス、お前はとりあえず冷えたコーラをアメリカ人たちのテーブルに置いてこい。彼らは糖分が足りないと怒りっぽくなるんだ」

HIROMはコメディ映画のようなドタバタ劇を毎日こなしながらも、スタジアムのピッチを見下ろすたびに、不思議な感動を覚えていた。 彼はプロのサッカー選手を目指していた過去がある。しかし、度重なる膝の怪我で、その夢は20代前半で完全に絶たれた。自分は選ばれなかった人間だ。絶望に沈んだ時期もあったが、スタジアムの熱狂を捨てきれず、裏方として生きる道を選んだ。 人生は本当に思うようにならない。だが、泥だらけになって配線を繋ぎ、芝を整える今の仕事に、彼は確かな誇りを持っていた。彼らが土台を作らなければ、スーパースターたちは1ミリも輝けないのだから。

「さあ、世界最大の祭りが始まるぞ」 HIROMは額の汗を拭い、照りつけるメキシコの太陽を見上げた。

昼:歴史の胎動

ウォール街、午前9時30分(EDT)――市場オープン

けたたましいベルの音が鳴り響き、世界最大のカジノがその扉を開けた。 瞬間、SENAの目の前にある複数のモニターが、文字通り「爆発」した。

SpaceXのティッカーシンボルに、天文学的な数の買い注文が殺到する。公開価格を遥かに飛び越え、初値がつかない状態が続く。ニュースキャスターたちの興奮した声がフロアに響く。 「信じられない規模です! これほどの買い需要は、テクノロジー・バブルの絶頂期すら凌駕しています!」

午前10時15分。ついに初値がついた瞬間、フロアから地鳴りのような歓声が上がった。だが、SENAの表情は険しいままだった。 「来たぞ、利食いの波だ。アルゴが動く!」 初値がついた直後、HFTのアルゴリズムが一斉に利益確定の売りを浴びせ、株価のチャートは垂直に滝のように落ち始めた。素人の個人投資家たちがパニックに陥り、投げ売りが連鎖する。

「ブラッド、今は手を出すな! まだ底じゃない!」SENAは叫んだ。 市場の恐怖指数が跳ね上がる。SENAは、かつて自分が全財産を失った時の恐怖を思い出していた。胃がねじ切れるようなあの感覚。しかし今の彼は違う。過去の失敗が、彼に「待つ」ことの重要性を教えていた。恐怖に飲み込まれるな。恐怖を客観視しろ。

「……ここだ」 SENAはマウスをクリックし、莫大な額の買い注文を市場に叩き込んだ。

ケープカナベラル、午前11時30分(EDT)――静寂と轟音の狭間

ケープカナベラルの管制室は、不気味なほどの静寂に包まれていた。 モニターには、射点に立つ巨大なロケットの姿が映し出されている。shimoの担当する推進系のデータは、全てグリーンのランプを灯している。

『T-マイナス2時間。推進剤の充填プロセス、正常』 アナウンスが冷徹に響く。

「なあshimo」マイクが隣で小声で言った。「株価、とんでもない動きをしてるらしいぞ。上がって、落ちて、また上がり始めている」 「市場もロケットも同じだな」shimoはモニターから目を離さずに答えた。「重力に逆らって飛び立つには、莫大なエネルギーと、それに耐えうるだけの構造が必要だ。途中で空中分解するか、大気圏を突破するか」

shimoの脳裏に、再びあの爆発のフラッシュバックがよぎる。だが、彼はゆっくりと深呼吸をし、現在に意識を戻した。過去の亡霊に怯えている暇はない。自分は今、この機体の心臓部の鼓動を聴いているのだ。 「バルブB-4、圧力が規定値の上限ギリギリで推移している。許容範囲内だが、注視しておけ」 「了解」

宇宙が「夢」から「経済」へと変わった今日。だが、その根底にあるのは、いつの時代も変わらない、人間の途方もない執念と緻密な計算、そして極限の緊張感である。

メキシコシティ、午後12時00分(CST)――開門

エスタディオ・アステカのゲートが開かれた。 その瞬間、色とりどりのユニフォームを着た数万人の群衆が、堰を切ったようにスタジアムになだれ込んできた。ラテンの陽気な歌声、太鼓のリズム、ブブゼラのけたたましい音が空気を震わせる。

「おい、ゲート7でチケットの読み取りエラーだ! HIROM、行ってくれ!」 「了解!」

人波を掻き分けながら現場に向かうHIROMの目に、泣きじゃくる小さな男の子の姿が映った。メキシコ代表の緑色のユニフォームを着ているが、迷子らしい。周囲の大人たちは熱狂のあまり、その小さな存在に気づいていない。 HIROMは咄嗟に男の子を抱き上げ、安全なコンコースの隅へと移動した。 「大丈夫か? お父さんは?」スペイン語で話しかけるが、男の子は泣き止まない。 HIROMはポケットから、仕事用に持っていた小さな光るおもちゃ(LEDのペンライト)を取り出し、手品のように男の子の目の前で振ってみせた。 男の子が不思議そうに目を丸くし、泣き止んだ。そこに、血相を変えた父親が駆け込んでくる。

「グラシアス! アミーゴ、本当にありがとう!」 父親はHIROMを強く抱きしめた。言葉や国境など関係ない。そこにあるのは、純粋な感謝の感情だけだった。

「いいってことよ。さあ、最高の試合を楽しんでくれ!」 HIROMは笑顔で親子を見送り、再びトラブルの絶えない現場へと走り出した。世界が狭くなるということは、こういうことなのかもしれないと、彼は汗だくになりながら思った。全く違う背景を持つ人間たちが、同じ場所で同じ熱を共有している。

午後:シンクロナイズする世界

午後1時55分(EDT) / 午後12時55分(CST)――カウントダウン

三つの場所での緊張が、同時に臨界点に向かっていた。

ウォール街では、SENAが画面を睨みつけていた。SpaceXの株価は、V字回復を果たした後、もみ合い(コンソリデーション)を続けていた。だが、チャートの形は明確な上昇エネルギーの蓄積を示している。 「上だ。絶対に上へブレイクする」 SENAは追加の買いポジションを構築した。アルゴリズムのフェイクの動きを見破り、市場の心理が「恐怖」から「熱狂」へと完全に切り替わる瞬間を待つ。

メキシコシティでは、オープニングセレモニーが最高潮に達していた。ピッチ上には48カ国の国旗が翻り、超満員のスタジアムは地響きを立てている。開幕戦を戦う両チームの選手たちがピッチに散らばり、主審がホイッスルを口に咥え、腕時計に目を落とした。 HIROMはピッチレベルのスタッフ席から、その光景を食い入るように見つめていた。自分が這いつくばって整えた芝の上で、いよいよ世界が動き出す。

ケープカナベラルでは、カウントダウンがいよいよ最終段階に入っていた。 『T-マイナス1分』 shimoはキーボードから手を離し、姿勢を正した。ここから先は、システムが自律的にシーケンスを進行させる。人間にできることは、全てやり尽くした。 「頼む……」 過去のトラウマをねじ伏せるように、shimoは祈るような気持ちでモニターのデータを見つめた。

限界突破の瞬間

午後2時00分(EDT)。 メキシコシティは午後1時00分(CST)。

ウォール街のSENAのモニターで、巨大な買い注文が市場の壁を突き破った。SpaceXの株価チャートが、テクニカルのレジスタンスラインを一気にブレイクアウトし、未知の価格帯へと垂直に駆け上がった。フロア全体が、割れんばかりの歓声と怒号に包まれる。 「抜けた! 天井知らずだ!」ブラッドが絶叫する。 SENAは深く息を吐き出し、背もたれに体を預けた。勝った。人間の感情の波を読み切り、AIの裏をかいた。

同時に、メキシコシティのアステカ・スタジアム。 主審の吹く甲高いホイッスルの音が、大歓声の海へと放たれた。2026年ワールドカップ開幕戦、キックオフ。選手がボールを蹴り出した瞬間、スタジアムの空気が弾け、8万人のどよめきが物理的な衝撃波となってHIROMの体を貫いた。 「始まった……!」 HIROMは拳を強く握りしめた。

そして、ケープカナベラル。 『T-マイナス、スリー、ツー、ワン、ゼロ。メインエンジン点火、リフトオフ!』 モニター越しにも伝わるほどの圧倒的な閃光と轟音。数千トンの鉄の塊が、重力の鎖を引きちぎり、灼熱の炎を噴き出しながらフロリダの青空へと上昇していく。 shimoの目の前で、各パラメーターは完璧な数値を示しながら推移していた。 「……クリア。Max-Q(最大動圧点)通過。第1段エンジン、正常に燃焼中」 shimoの声は震えていた。かつて爆発に散った絶望の記憶が、今、空へ向かって力強く突き進む機体の姿によって、ようやく上書きされていくのを感じた。

経済の天井が破られ、文化の祭典が幕を開け、人類の技術が宇宙へと飛翔する。 この瞬間、地球上の異なる場所で、人間が作り出したエネルギーが同時に限界を突破したのだった。

終章:広がる宇宙と、繋がる足元

祭りの後の夕暮れ。

ニューヨーク。熱狂のセッションを終え、莫大な利益を手にしたSENAは、静まり返りつつあるオフィスで一人、窓の外の摩天楼を見下ろしていた。 今日、彼は大きな成功を手にした。だが、これで終わりではない。明日になればまた市場は開き、新たな戦いが始まる。失敗して全てを失いかけた過去があるからこそ、今日の成功の重みがわかる。 「まだまだ、上に行けるさ」 SENAは冷めたコーヒーを飲み干し、口元に微かな笑みを浮かべた。

メキシコシティ。開幕戦が終わり、観客が去った後のスタジアムは、ゴミが散乱し、祭りの後の独特の寂しさに包まれていた。 HIROMは、ポリ袋を片手にゴミを拾い集めていた。疲労で体は鉛のように重い。だが、心の中には清々しい風が吹いていた。 「おいHIROM、明日の第2試合の設営、朝5時からだぞ!」 遠くからカルロスが叫ぶ。 「ああ、わかってるよ! 全く、休む暇もないな!」 HIROMは笑い返した。プロ選手にはなれなかった。華やかな舞台の真ん中に立つことはできなかった。だが、この巨大な熱狂の歯車の一つとして、自分は確かに世界を回している。人生は捨てたものじゃない。

そして、ケープカナベラル。 軌道投入成功の報を受け、管制室は歓喜に包まれていた。仲間たちが抱き合い、シャンパンの栓が抜かれる。 shimoは喧騒から少し離れ、建物の外に出た。 フロリダの夜空には、満天の星が輝いていた。あの星々のどれかに向かって、今日打ち上げた機体が飛んでいる。 かつての自分は、失敗に打ちのめされ、二度と立ち上がれないと思っていた。挑戦しなければ失敗することもない。安全な場所にいれば傷つくこともない。だが、それでは決して、この夜空の美しさを心から感じることはできなかっただろう。 失敗を背負い、それを受け入れ、それでもなお一歩を踏み出すこと。それが、不器用な人間社会が少しずつでも前に進むための、唯一の推進力なのだ。

2026年6月12日。 地球が最も狭く感じられたこの日、人々の視線は、確かに無限に広がる未来へと向けられていた。 shimoは深く深呼吸をし、再び管制室の仲間たちのもとへ向かって歩き出した。彼の足取りは、いつになく軽かった。

令和6年6月30日 今日も平凡な一日にありがとう!

 

『尊敬・感謝・必死』の気持ちを大切に日々を生きよう!

私たち一人一人の人生は、自分が思っているよりもずっとずっとドラマチックだ!

そして、私は『格好いいですね』と言われるよりも『一生懸命ですね』と言われる方が嬉しい誉め言葉。

平凡だけど物心ともに豊かな生活
平凡な人生を心豊かに生きる研究

50歳から始める『自分と向き合えば心も体も豊かになれる』

平凡な人生を穏やかに、懸命に、心豊かに生きるには何をすればいいのか日々研究中

The life of each of us is far more dramatic than we think !

A mediocre day is the happiest !
Thanks to my family, everyday is really happy !

Thank you for being able to spend a peaceful and prosperous world.
And thank all the human beings who have built this peaceful and prosperous world.

Update your mind & action everyday every moment!
and
Broadcast yourself!
That’ make your life better day by day.

50歳から始める『MLog Tube』
『MLog Tube』とは、『Music Life Log YouTube』の略称であり、私が考えました。
自分の生活をスマートフォンで撮影して音楽に乗せて記録する。簡単な作業で日記代わりに自分の生活を後で振り返ることができます。
それは、自分自身の世界観の表現であり記録です。
私は毎日『Mlog Tube』を投稿する習慣をお勧めします。

“MLog Tube” starting from the age of 50
“MLog Tube” is an abbreviation for “Music Life Log YouTube” and I thought of it.
Take a picture of your life with a smartphone and record it with music. Instead of a diary, you can look back on your life with a simple task.
It is an expression and a record of my own view of the world.

令和6年6月29日 今日も平凡な一日にありがとう!

 

『尊敬・感謝・必死』の気持ちを大切に日々を生きよう!

私たち一人一人の人生は、自分が思っているよりもずっとずっとドラマチックだ!

そして、私は『格好いいですね』と言われるよりも『一生懸命ですね』と言われる方が嬉しい誉め言葉。

平凡だけど物心ともに豊かな生活
平凡な人生を心豊かに生きる研究

50歳から始める『自分と向き合えば心も体も豊かになれる』

平凡な人生を穏やかに、懸命に、心豊かに生きるには何をすればいいのか日々研究中

The life of each of us is far more dramatic than we think !

A mediocre day is the happiest !
Thanks to my family, everyday is really happy !

Thank you for being able to spend a peaceful and prosperous world.
And thank all the human beings who have built this peaceful and prosperous world.

Update your mind & action everyday every moment!
and
Broadcast yourself!
That’ make your life better day by day.

50歳から始める『MLog Tube』
『MLog Tube』とは、『Music Life Log YouTube』の略称であり、私が考えました。
自分の生活をスマートフォンで撮影して音楽に乗せて記録する。簡単な作業で日記代わりに自分の生活を後で振り返ることができます。
それは、自分自身の世界観の表現であり記録です。
私は毎日『Mlog Tube』を投稿する習慣をお勧めします。

“MLog Tube” starting from the age of 50
“MLog Tube” is an abbreviation for “Music Life Log YouTube” and I thought of it.
Take a picture of your life with a smartphone and record it with music. Instead of a diary, you can look back on your life with a simple task.
It is an expression and a record of my own view of the world.

令和6年6月28日 今日も平凡な一日にありがとう!

 

『尊敬・感謝・必死』の気持ちを大切に日々を生きよう!

私たち一人一人の人生は、自分が思っているよりもずっとずっとドラマチックだ!

そして、私は『格好いいですね』と言われるよりも『一生懸命ですね』と言われる方が嬉しい誉め言葉。

平凡だけど物心ともに豊かな生活
平凡な人生を心豊かに生きる研究

50歳から始める『自分と向き合えば心も体も豊かになれる』

平凡な人生を穏やかに、懸命に、心豊かに生きるには何をすればいいのか日々研究中

The life of each of us is far more dramatic than we think !

A mediocre day is the happiest !
Thanks to my family, everyday is really happy !

Thank you for being able to spend a peaceful and prosperous world.
And thank all the human beings who have built this peaceful and prosperous world.

Update your mind & action everyday every moment!
and
Broadcast yourself!
That’ make your life better day by day.

50歳から始める『MLog Tube』
『MLog Tube』とは、『Music Life Log YouTube』の略称であり、私が考えました。
自分の生活をスマートフォンで撮影して音楽に乗せて記録する。簡単な作業で日記代わりに自分の生活を後で振り返ることができます。
それは、自分自身の世界観の表現であり記録です。
私は毎日『Mlog Tube』を投稿する習慣をお勧めします。

“MLog Tube” starting from the age of 50
“MLog Tube” is an abbreviation for “Music Life Log YouTube” and I thought of it.
Take a picture of your life with a smartphone and record it with music. Instead of a diary, you can look back on your life with a simple task.
It is an expression and a record of my own view of the world.

令和6年6月27日 今日も平凡な一日にありがとう!

 

『尊敬・感謝・必死』の気持ちを大切に日々を生きよう!

私たち一人一人の人生は、自分が思っているよりもずっとずっとドラマチックだ!

そして、私は『格好いいですね』と言われるよりも『一生懸命ですね』と言われる方が嬉しい誉め言葉。

平凡だけど物心ともに豊かな生活
平凡な人生を心豊かに生きる研究

50歳から始める『自分と向き合えば心も体も豊かになれる』

平凡な人生を穏やかに、懸命に、心豊かに生きるには何をすればいいのか日々研究中

The life of each of us is far more dramatic than we think !

A mediocre day is the happiest !
Thanks to my family, everyday is really happy !

Thank you for being able to spend a peaceful and prosperous world.
And thank all the human beings who have built this peaceful and prosperous world.

Update your mind & action everyday every moment!
and
Broadcast yourself!
That’ make your life better day by day.

50歳から始める『MLog Tube』
『MLog Tube』とは、『Music Life Log YouTube』の略称であり、私が考えました。
自分の生活をスマートフォンで撮影して音楽に乗せて記録する。簡単な作業で日記代わりに自分の生活を後で振り返ることができます。
それは、自分自身の世界観の表現であり記録です。
私は毎日『Mlog Tube』を投稿する習慣をお勧めします。

“MLog Tube” starting from the age of 50
“MLog Tube” is an abbreviation for “Music Life Log YouTube” and I thought of it.
Take a picture of your life with a smartphone and record it with music. Instead of a diary, you can look back on your life with a simple task.
It is an expression and a record of my own view of the world.