『無用之用』(むようのよう)
一見役に立たないように見えるが実は重要な役割を果たしているもの。すぐには役に立たないが、本質的な価値があるものという意味の四字熟語。
すぐに役に立つものを有用の用とするのに対して、すぐには役に立たないものがそこに計り知れない有用性を見出すことを教えてくれる。
中国の思想家である老子や荘子の言葉に由来していて、『荘子』にある「人は皆、有用の用は知れども、無用の用を知るなきなり」(人は皆、役に立つものの役には立つことは知っているが、役に立たないものの役には立たないことは知らない)という言葉が源泉の一つとなっている。
2025年の今年、日本人でノーベル賞を受賞した北川進氏も学生時代に読んだ荘子の言葉に影響を受け、研究の初期段階では「何の特徴もない」とされていた「金属有機構造体」の素材に注目、その多孔性に着目してノーベル賞受賞という功績につながった。
2025年11月12日(アメリカ時間)に、230年以上もアメリカの文化に根付いていた1セント硬貨(ペニー)の製造を終了したそうだ。
1793年に導入された当時、1セントでビスケットやキャンディーが買えたが、現在は製造コストは1枚あたり約4セントになることやキャッシュレス時代に向けてトランプ大統領が1セント硬貨の製造中止を指示したことから製造終了となった。
自分が初めてグアムやカリフォルニアのロングビーチなどに旅行や短期留学に行ったときは、それぞれの硬貨の違いや価値の違いに戸惑って使いきれず、ドル紙幣などを使っていた結果、たくさん硬貨が余って帰国することになったことも思い出の一つだ。
それが、キャッシュレス決済の普及により、少額硬貨などは製造や流通のコストが高くなるために1セント硬貨(ペニー)の製造が終了することは、感傷的な感じもするが時代の変化の要請だろう。
ただ、当然ながら法定通貨としての役割が終わるわけではないので、引き続き現在まで製造された1セント硬貨(ペニー)は流通し続けるし使うことができる。
そして、一ドルは100セントという意味で、1セントという価値にも大きな意味がある。
現在は1ドル150円前後と考えれば、一セントは1円50銭くらいの価値ということになるが、1ドルも100ドルも1億ドルも1セントの積み重ね。
同じく10万円も100万円も100億円も1円の積み重ねだから1円を大切に考えられない人は1万円に泣くことになる。
そんな意味で、まさに1セント硬貨(ペニー)は『無用之用』(むようのよう)の象徴と考えることができるだろう。
