石破茂首相退陣に学ぶ『漱石枕流』

『漱石枕流』(そうせきちんりゅう)

この四字熟語の意味は、自分の失敗や間違いを認めず、屁理屈やこじつけで言い逃れることを表す。

元々の由来は、西晋時代の人物、孫楚(そんそ)が隠居の意思を友人に話す際に、本来「石を枕に、川の流れで口を漱ぐ(すすぐ)」生活を送りたいという思いを、間違えて「石で口を漱ぎ、川の流れを枕にしたい」と言ってしまったという故事。

それを聞いた友人は、「流れは枕にするものではなく、石も口を漱ぐものではない」と指摘されると、孫楚は間違いを認めず、即座に「流れに枕するのは耳を洗うため、石に漱ぐのは歯を磨くためだ」と屁理屈をつけたと言われている。

この『漱石』という言葉は、明治の文豪夏目漱石の雅号も由来するらしい。

それにしても、石破茂首相の屁理屈やこじつけ、負け惜しみはひどかった。参議院選挙が7月20日だったはずだから、ひと月以上の間総理総裁の席にしがみつき、退陣を先送りにしてきたことになる。

個人的に、石破茂首相は好きでもないし嫌いでもないが、結局国の舵取りを担えるのは選挙という戦いで勝ったリーダーだけだ。

どんなに優れた政策や政治思想やその理屈を持っていても、選挙で勝てないリーダーの言うことには発言力も説得力も伴わない。

それを知ってか知らずか、米国の関税問題や政治日程、物価高対策やその他の課題を理由に政治空白は許されないと息巻き、辞任や退任を避けてきたが本当に万策尽き、いよいよ引導を渡される格好になってしまった。

夏目漱石はその文才で「漱石」という皮肉を有効に生かしたが、石破茂首相の『漱石枕流』には辟易するものがあった。

自民党総裁が変わったとしても少数与党という現状は変わるものではなく、これからも不安定な政権運営を余儀なくされることになる。

それはまた再び国民生活が不安定な状態になることを意味する。

福田・安倍・麻生と次々と総理が変わったあの時期の閉そく感をよく覚えている。あの時の重苦しい雰囲気がやってくることがないように期待したい。

『漱石枕流』(そうせきちんりゅう)