坂口志文氏ノーベル生理学・医学賞受賞に学ぶ『実事求是』(じつじきゅうぜ)

『実事求是』(じつじきゅうぜ)

事実に基づいて真理を探究するという意味の中国の言葉。中国清朝時代の考証学の学風や、理論と実践を統一する科学的な態度を示す標語で、事実を重んじ憶測や空疎な議論を排し、物事の本質を追求することを指している。

「実事」は実際の出来事、本当のこと、真実。「求是」は真理や正しいことを求めること。

「事を実にして、是を求める」と訓読みもする。

2025年のノーベル生理学・医学賞に日本人の坂口志文氏の共同受賞が発表された。

日本人としては誇らしく感じるが、受賞した研究の内容はとても素人には簡単に理解できない。

免疫反応を抑えるブレーキ役となる「制御性T細胞」の存在を発見したことで、アレルギー疾患や1型糖尿病などの自己免疫疾患、その他にもがんなどの病気の新しい治療法の開発に道を開いたことが評価されたということだ。

その過程において興味深いのが、研究当初は「制御性T細胞」の存在を疑う考え方も強くて、かなりの逆風を強いられた時期もあったそうだ。

それに負けずに根気よく研究を進めた結果1980年代に免疫の暴走を抑えるタイプの細胞の存在を示すことになり、1995年に「制御性T細胞」の発見者となった。

このような取り組み方やその姿勢が『実事求是』(じつじきゅうぜ)という四字熟語につながると感じる。

自分が考える免疫の暴走を抑えるタイプの細胞が存在するという興味・関心を長い期間かけて研究して証明する。まさに「事を実にして、是を求める」の体現である。

これがまた世の中に広まることにより、実際の病気治療に役立ったり、ノーベル賞受賞が一つの希望となって若い世代や子供たちに研究者が増えることになれば、様々な領域での貢献になる。

個人的にはノーベル賞が一つの権威化して、今やそれが研究の中身や成果よりも富や名声の源泉になっている面も否めなく感じるところもある。

ただ、それを差し引いてもプラスの側面が大きいこともまた現実だと思うので、ノーベル賞が廃れることはないだろう。

現時点では2025年のノーベル賞の発表はまだ続くので、他にも日本人の受賞可能性を楽しみにしたい。

『実事求是』(じつじきゅうぜ)