チンチン電車の日に学ぶ『越鳥南枝に巣くい胡馬北風に嘶く』

『越鳥南枝に巣くい胡馬北風に嘶く』(えっちょうなんしにすくい、こばとうふうにいななく)

このことわざは、故郷を恋しく思う気持ちを表す。

中国南部の越(えつ)の国から来た渡り鳥が、故郷をなつかしんで日当たりのよい南の枝に巣を作ったり、北方の胡(こ)の国の馬は北風が吹くと故郷を慕っていななき声をあげる、という故事に由来する。

1903年(明治36年)の今日、東京電車鉄道の路面電車が新橋~品川で営業を開始し、東京で初めて路面電車(チンチン電車)が走ったそうだ。

なぜ、路面電車で故郷を恋しく思う気持ちになるかというと、自分が幼いころには自宅近くの道路でも路面電車が走っていて、時折路面電車に乗って駅前の映画館で『ゴジラ』などの映画を観に連れて行ってもらったことを懐かしく思い出す。

道路の中央分離帯に路面電車の停留所があって、今で思えば歩いて行ける駅前まで路面電車で出かける外出が本当に遠出に思えた。

そして、『ゴジラ』の映画も本当にこんな怪獣だか恐竜だかみたいな生物が出てきたらどうしようと肝を冷やしながら観ていた。

その近くを走っていた路面電車もいつしか廃線になってしまった。

世の中はどんどん変化するけれど、今日のチンチン電車の日のような記念日に、近所を走っていた路面電車などふと幼い頃の街の風景を思い出すと、どことなく懐かしさや切なさやいろいろな気持ちが入り混じって少し複雑な心境になったりする。

南から来る鳥は南側に巣を作ったり、北から来た馬は北風に故郷を思っていななく『越鳥南枝に巣くい胡馬北風に嘶く』という故事・ことわざには人間の深い洞察力を感じる気がして、とても好きな言葉だ。