『屋烏之愛』(おくうのあい)
人を深く愛するあまり、その人を取り巻くすべて、さらには屋根にとまっているカラスにまで愛情が及ぶ様子を表現。愛情が非常に深いこと、あるいは愛する人に関係するすべてを大切に思うことをたとえる故事成語。
今日はアンパンマンの日とされていて、1988年(昭和63年)10月3日に「それいけ!アンパンマン」が日本テレビ系列で放送を開始した日にちなんでということだそうだ。
自分の子供が幼かったころにはすっかりと人気者だったアンパンマン。元々は、「パン工場」に住むパン作りの名人・ジャムおじさが“心を持ったあんパン”を作りたいと思っていたが上手くいかずに困っていたところ、ある日の夜に流れ星がパン工場のパン焼き窯に降り注ぐ。この「いのちの星」があんパンに宿り、「アンパンマン」が誕生したらしいというストーリーらしい。
困っている人には自分の顔を食べさせるという無償の愛がアンパンマンの根底に流れているが、まさに『屋烏之愛』(おくうのあい)というほどの愛情を感じさせるキャラクターである。
この『屋烏之愛』(おくうのあい)という言葉は、中国前漢時代の説話集である『説苑』の「貴徳」篇に記されているということで、周の武王が殷の紂王を滅ぼした後、殷の人々をどうすればよいかを太公望に尋ねた際、太公は「人を愛する者はその人の屋根の鳥(烏)にまで愛がおよぶ。人を憎む者は、その人の使用人(余胥)まで憎む」と答えたことに由来する。
この「人を愛する者はその人の屋根の鳥(カラス)にまで愛がおよぶ。」ということが『屋烏之愛』(おくうのあい)に相当して、「人を憎む者は、その人の使用人(余胥)まで憎む」ということは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということに相当する。
今の現代社会では、誰も彼もが自分のことで精一杯で、自分の身内以外に無償の愛情を持って接するという奇特な人はほとんどいない。ボランティア精神だけでは、どんなに良い活動も長く継続させることができないのもまた事実。
ただし、身近に困っている人がいたら、ほんの少しでも手を差し伸べるという気持ちは忘れたくないものだ。
そんなことを思い起こさせてくれるのが、アンパンマンの日であり『屋烏之愛』(おくうのあい)という言葉なのだろう。
