令和8年2月9日 今日も平凡な一日にありがとう!

高市政権今後の課題(架空のショートストーリー)

令和8年(2026年)2月9日、月曜日。 前日の投開票日から一夜明けた永田町は、しらじらとした冬の霧に包まれていた。

衆議院議員総選挙の結果は、自民党の「歴史的圧勝」だった。公示前の議席を大幅に上回り、単独で300議席に迫る大勝。日本初の女性宰相、高市早苗が放った「責任ある積極財政」と「国家の究極の使命」というメッセージは、混迷する国民の心に深く刺さった。

しかし、首相の政策ブレーンを務める私、shimoの胸中にあるのは、勝利の余韻ではなく、喉元に突きつけられた冷たい刃の感触だった。


06:15 溜池山王

赤坂の議員宿舎から官邸へと向かう車中、私はタブレットに映し出される各選挙区の精査データを凝視していた。 「……おかしい」 思わず独り言が漏れる。表面上の数字は完璧だ。だが、詳細を追うと奇妙な符合が見えてくる。かつての「安倍派」残党や高市支持を鮮明にしていた若手候補の多くが、接戦を制している一方で、党内中道派や旧岸田派に近い候補者の得票率が、特定の時間帯を境に不自然な動きを見せていた。

「shimoさん、おはようございます。お顔の色が優れませんね」 官邸地下の入り口で、高市首相の秘書官が声をかけてきた。 「徹夜のせいですよ。総理のご様子は?」 「すでに執務室に入られています。先ほど麻生副総裁からお電話があったようです」

麻生太郎。この大勝を演出したキングメーカーの一人だ。だが、彼がこの勝利をどう「料理」するつもりなのか、私は疑念を拭えなかった。

08:30 総理執務室

「おめでとうございます、総理。これで盤石ですね」 私が部屋に入ると、高市は窓の外を眺めていた。彼女の背中は、勝利の重圧を微塵も感じさせないほど真っ直ぐに伸びている。 「盤石、ね……。shimoさん、あなたもそう思う?」

彼女が振り返った。その瞳は鋭く、冷徹な分析者のそれだった。 「数字の上ではそうです。しかし、自民党が勝ちすぎた。これは『毒』になります。党内のパワーバランスが崩れ、制御不能な遠心力が働き始める」

高市は机の上に置かれた一通の封筒を指し示した。 「今朝、麻生さんから手渡された『特別国会の人事案』の草案よ。私の知らない名前が、重要なポストに並んでいる」

私は背筋が凍るのを感じた。麻生氏が動くのは予想していたが、これほど早いとは。そこには、今回の選挙で「恩を売られた」新人議員たちを束ねる、新たな派閥形成の意図が透けて見えていた。

11:00 党本部 4階

自民党本部で行われた役員会は、熱狂に包まれていた。 茂木敏充幹事長が、これ見よがしに笑顔で高市の肩を叩く。 「総理、素晴らしい戦いでした。これで憲法改正も、積極財政も、思いのままですな」

その言葉の裏にある「貸し」を、私は感じ取らずにはいられない。茂木は今回の選挙中、自らの人脈をフル活用して高市への資金援助を差配した。それゆえ、今後の予算編成において、彼は自らの影響力を極大化させる権利を得たと思い込んでいる。

「幹事長、ありがとうございます。ですが、市場は私たちの出方を見ています。浮かれている暇はありません」 高市が淡々と返す。その瞬間、茂木の目が一瞬だけ細まった。それは、獲物を狙う蛇の目だった。

私は会場の隅で、スマホの通知を受け取った。 『極秘:財務省幹部と麻生氏、本日13時に会談予定』 情報源は、私が省内に張り巡らせた「政策の蟻」たちの一人だ。 高市政権の核である「積極財政」を骨抜きにするための、財務省による「増税派の逆襲」が始まろうとしていた。

14:00 官邸 執務室

午後のブリーフィング。私は高市に、ある財務データの異常を報告した。 「総理、円安を口実とした追加利上げの圧力が、急激に強まっています。背後にいるのは、日銀の一部と……そして、我々の『味方』であるはずの重鎮たちです」

高市はペンを置いた。 「彼らは私が『サナエノミクス』を完遂するのを阻止したいのね。勝利という名の鎖で私を縛り付け、操り人形にするつもりだわ」

「サスペンスですよ、これは」私は皮肉を込めて言った。「昨日の国民の熱狂は、今や永田町の暗闘の影に隠れてしまった」

その時、執務室のドアが激しく叩かれた。 入ってきたのは、河野太郎デジタル大臣(当時)だった。彼は血相を変えていた。 「総理、これを見てください。ネット上で、今回の選挙の『不可解な票の動き』が拡散され始めています。工作員による世論操作の疑いがある」

私はタブレットを開いた。SNSでは「高市政権による不正選挙」という根拠なき陰謀論が、まるで何者かに仕組まれたかのようにトレンドを席巻し始めていた。大勝したはずの政権が、一夜にして「正当性」の攻撃にさらされている。

「……始まったわね」 高市は呟いた。外政の緊張、内政の暗闘。そして、デジタル空間での情報戦。 この勝利は、平穏への入り口ではなく、底なしの底無し沼への最初の一歩だったのだ。

20:00 静まり返った官邸

夜、shimoである私は、一人で資料をまとめていた。 高市首相は、明日の特別国会に向けた演説原稿を書き直している。彼女が最後に書き加えた一文を、私は知っている。

「日本を、守り抜く。それは、外の敵からだけではない」

振り返れば、今日という一日は、高市政権の真の戦いが始まった日だった。300議席という巨大な武器を手にしながら、その武器の重みで自壊するのか。あるいは、この逆風を逆手に取って真の変革を成し遂げるのか。

私は、窓の外に広がる永田町の闇を見つめた。 そこには、勝利の美酒に酔いしれる政治家たちと、虎視眈々と主導権を狙う官僚たち、そして正体不明の「第三の勢力」の影が蠢いていた。


【分析】高市政権運営における問題点と落とし穴

令和8年衆院選後の高市政権が直面するリスクは、以下の3点に集約される。

1. 「勝利の呪い」と党内統治の機能不全

300議席という圧勝は、皮肉にも「高市降ろし」のトリガーとなり得る。自民党内の非主流派や、麻生・茂木といった実力者たちは、高市首相の独走を許さない。彼らは新人議員を派閥に囲い込み、「議席を与えたのは自分たちだ」という論理で人事を要求してくるだろう。首相がこれに屈すれば「操り人形」となり、拒めば「党内抗争による停滞」を招く。このジレンマが最大の落とし穴である。

2. 「金利上昇」という経済的地雷

高市氏が掲げる「積極財政」は、低金利環境を前提としている。しかし、米国経済の変動や国内のインフレ率上昇を受け、日銀や財務省が「正常化」の名の下に利上げを強行する可能性がある。利上げは国債の利払い費を増大させ、彼女の政策の根幹である「成長投資」の予算を圧迫する。この「金融政策のねじれ」をどう制御するかが、政権寿命を左右する。

3. 情報戦と「正当性」への攻撃

現代の政治において、選挙後の「世論の反転」は極めて速い。今回のストーリーで描いたような「不正疑惑」の流布や、SNSでの組織的なネガティブキャンペーンは、政権の支持率を急速に削り取る。特に「強いリーダーシップ」を掲げる高市氏にとって、スキャンダルや疑惑による「クリーンなイメージ」の崩落は致命傷になりやすい。

4. 外交・安保の急進化への反発

憲法改正や防衛力強化に前のめりになりすぎるあまり、連立を組む日本維新の会との亀裂が表面化する恐れがある。また、中国や北朝鮮を刺激しすぎることで、経済的なデカップリングが加速し、国内の産業界から悲鳴が上がるシナリオも想定される。

まとめ: 高市首相にとっての令和8年2月9日は、敵が「野党」から「身内」と「市場」へと変わった日である。この見えない敵との戦いに勝利するためには、彼女の信念である「鋼の意志」だけでなく、時に敵を飲み込む「柔の政治力」と、緻密な「デジタル情報戦略」が不可欠となるだろう。